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2018年3月8日木曜日

(少女前線/Girl's frontline)公式設定資料集付属資料その1

 少女前線公式設定資料集に付属している小冊子の中身が、何故か英訳された状態でネットの海に漂っていた模様。という訳で日本語に翻訳した。長いので章ごとに分割して投稿する予定。
・・・なんとなく思い出した先行者
設定関連記事の目録はこっち


[修正済] 軍情報部
提出済
[修正済] 軍欧州情報部   コピー 番号: 6
[修正済] 軍アジア州情報部 コピー 番号: 7
番号: TS-[修正済]SAD00*
秘密区分: 機密
閲覧権限: 大佐以上


 2045年から61年は人類史において最も暗く、逼迫した時代の一つだ。第3次世界大戦の勃発は、世界の生産能力と経済システムを破壊する激しい乱気流をもたらし、軍の動員と戦争の発生は人間という資源の不足を生じさせた。放射能汚染の広がりは居住可能地域を絶え間なく減少させ、その他様々な要因が組み合わさって人間の出生率を大きく低下させた。人間はますます高価で価値ある資源となり、戦争で最も大きな利益を得る軍需産業でさえ、継続的な生産のための人件費を支払うことができなくなった。生産能力の維持と費用の削減のため、幾つかの重要な軍事組織は人間の労働力を置き換えるための生体部品を用いた人型ロボット(人形)の研究を開始した。

フレーム型ロボットの時代


第1世代の量産型人形は技術的には人形ではなかった。むしろアンドロイドと読んだほうが正しいだろう。その設計は生産性を向上させるため、初期のモデルとは異なるものになりがちだった。人件費と生産コストの削減のため、 レイバート・ジェネラル・マニュファクチャリングは2033年にフレーム型ロボットのライン製造方式の開発を開始した。フレーム型ロボットの要件には、大半の労働集約的な作業に対応できる信頼性の高い構造、有線接続で4時間、無線接続で6時間の長い自律稼働時間、 維持費削減のために作業内容に応じて部品を交換できる高い汎用性、内部ソフトウェアの切り替えによって作業を変更可能な人工知能が含まれていた。当時としては画期的な開発目標のため、開発主任ウェイトキンは指示を受けた際に大変困惑した。

 フレーム型ロボット生産型の最初の試作機2年後に完成した。部内での形式はALR-50(T) [注1]となった。 試作機の生産費用は極めて高価で、また試作機が壊れない程度の稼働期間でも導入に130人時間必要だった。 その後ウェイトキンの開発チームは迅速に改良を行い、ALR-50E2(T)ALR-51C(T)という2つの実用的な試作機を開発した。

 多様な試験を経て、ALR-50E2(T)は平均して1日20時間の動作が可能になり、耐久性と再充電能力も要求性能を満たした。 モジュール化された設計によってメンテナンスコストを低減できたが、比較的単純な構造のために要求されていた稼働中の作業変更は不可能になっていた。これを受けてウェイトキンのグループは、改良したAIと一般化した設計の構成を検証するためALR-51C(T)型試作機を開発した。ALR-51C(T)の最終テストの結果は良いものではなかった。大規模なテスト後もALR-50E2(T)よりも極めて複雑で、さらにALR-51C(T)のテストを支援できる適切なAIがなかった事で、適応性テストにおいては基準を満たすことができなかった。最終的にレイバート社のGMは、ALR-50E2(T)を正式な量産型として選ぶと思われていた。最新の改良型はALR-52Pとなり、対してALR-51C(T)は倉庫に送られてこれ以上の開発は行われないはずだった。一方開発主任であるウェイトキンはALR-51C(T)が大きな将来性を秘めていることを理解していた。適当なAIと本体の改良さえ行われれば、ALR-51C(T)の有用性は現在の技術的な限界を超えると考えていた。 しかし世界情勢が緊迫していくに連れて市場も縮小したため、レイバート社は2種のフレーム型ロボットを開発していくだけのリソースを持っていなかった。ALR-52Pは基本的な要求を満たしており、改良型はより高い性能を発揮していた。結局ウェイトキンもALR-52Pの開発チームに異動となり、ALR-51C(T)の存在はゆっくりと忘れ去られていった。

 ALR-51C(T)に再び光が当たるのは15ヶ月後のことだ。ウスター・ユナイテッド・エレクトロニクスが汎ヨーロッパ軍事連合から一連の自律作戦システムの開発を命じられた。このシステムはアサルトアーティラリーと呼ばれる車両のための自律行動能力を提供することを主としており、この開発は同社の第6研究所に所属するミハーチによって行われた。システムの汎用性を確保するためのデータを収集するため、開発チームは小型の車両にシステムを搭載する事を検討した。最初は自力で試験用の車両を製作しようとしたが、計画の初期段階で費用が彼らの予想を大きく上回ったため、彼らは外部に試験用の機材を求めざるを得なくなった。試験に最適な車両を探す作業は要求される性能の高さから容易に進まず、民間市場には適した車両が存在しなかった。ミハーチが計画の断念を考え始めた頃、彼は夕食会でウェイトキンと会う機会があった。ウェイトキンはこの時ロボット部門の管理者に昇格していた。二人は急速に打ち解け、ウェイトキンは喜んでミハーチの自律作戦システムの試験用車両のための技術支援を行うことになった。ウェイトキンの協力により、ミハーチの開発チームはALR-51C(T)の試験時のデータや完全な開発資料を安価で入手できた。ALR-51C(T)の助けによって自律作戦システムの導入は大きく加速した。重要なブレークスルーがわずか2ヶ月の間に成し遂げられた。

 ALR-51C(T)の外骨格はその汎用性によってシステムの命令を高い効率で実行可能だった。機能改善のため、技術陣は全体の構造を人間の体に近い形態に変更した。改造されたALR-51C(T)は新たにTD-01という形式を与えられ、開発チームはこの機体に"Baby"というあだ名を付けた。 部品の交換によって、TD-01[注2]は異なる車両の運用モードをシミュレート出来たため、一連の自律行動システムは前倒しで完成した。この結果には軍関係者も喜んだ。 このシステムの成功はアサルトアーティラリーの運用コストを大幅に削減し、汎ヨーロッパ連合機械化部隊の指揮能率を向上させた。そしてシステムの大量調達はウスター・エレクトロニクス社に大きな利益をもたらし、ミハーチの名声も高まった。しかしミハーチは自律作戦システムにとどまらず、このシステムを改良してTD-01のAIに組み込めば、この技術革新が彼が軍に提供した製品を遥かに上回る成果になると認識していた。そのため彼はすぐに自身の開発チームを設置し、ウェイトキンと共に適切な自律AIの開発を継続するための契約をレイバート社と結んだ。

 自律作戦システムの開発を通じて、ミハーチとウェイトキンの間には固い友情が結ばれていた。またTD-01の多額の投資もウェイトキンを興奮させ、 彼は新型の人形に期待を寄せた。ミハーチとウェイトキンのチームは合併し、 工作機械とマルチステージ・コンピューティングを利用可能な大型計算機を備えた研究施設へ移転した。半年間の研究の後、TD-01の構造は強化されてソフトウェアも改善された他、動作を補助するための少量の人工筋肉が試験的に搭載された。新たな改造を施されたTD-01CSD-02[注3]と名を改めた。 開発中はテストも同時並行で進められ、ミハーチのAI開発チームも継続的にコードの最適化とテスト結果を基にした様々な変更を行った。試験結果を元にCSD-02とそのAIの相性は引き続き向上したものの、依然として複雑すぎる構造という問題は解決されていなかった。ウェイトキンはCSD-02の部品を簡素化するため、ALR-52Pの設計を参照せざるを得なかった。


 軍に加えて幾つかの民間企業は、この計画に関心を持っていた。まもなく一部の企業がCSD-02に関する知的財産権のライセンスを購入し、独自の拡張を試みた。その中で最も成功したのはSzchelber・アドバンスド・テクノロジーだ。AIテストの報告書から Szchelber社は人形の将来性を確信し、CSD-02プラットフォームの研究開発の権利を取得するためウスター社に連絡を取った。アサルトアーティラリー向けAIの開発が進む中で、AIは有人システムを完全に代替できないことが実証された。そのため有人型のテストも継続していた。しかし有人システム開発の初期段階で死亡事故が起きて以来、ウスター社はAIシステムの開発に専念していたため、有人型の十分なデータを得ることができなかった。このためCSD-02プラットフォームのライセンスを取得したSzchelber社は、アサルトアーティラリーの負荷テスト用特殊人形の開発を軍から要請された。Szhelber社によって製作された人形は高負荷に対応し、各部の重力センサーで力の振る舞いと人形の動きに関するデータを直接得ることが可能であり、軍による実験や調整を容易にした。センサーシステムの最初の1式は2041年に完成し、搭載した人形はCSD-03Hと言う形式を与えられた。このセンサーシステムはその後も動きの正確性と俊敏性が向上したした後続の人形にも搭載され続けた。試験用人形の成功はこの技術に対する軍の関心を強めた。ウスター社と関係のあった両者の協力の下、軍と民間企業が共同で本格的な戦場で運用可能な人形の開発を行うことを望んだ。

 軍と2つの企業の協力は成功し、新たな人形とAIの研究は急速に軍高官の注目を集めた。彼らはこの研究の成功をおそらくは機械の兵士の出現と考えており、激しい人員不足に陥っていた軍にとっては甘美な誘惑だった。軍関係者の中でも、軍参謀本部のカーター将軍はこの人形にただならぬ関心を持っていた。彼は技術水準が一定に達すれば人形が人間の兵士を完全に置き換えることができ、大幅な死傷者の減少と火力の増大が可能だと信じていた。このため彼は特別資金を割り当てるよう呼びかけ、2社の協力を監督する内部委員会を設置させた。プロジェクトの円滑な推進を確実にするため、2社はより専門的な軍向けの戦闘用人形を制作するための人形を専門とした新たな会社を設立するために資金を投入した。この企業は「インポータント・オペレーション・プロトタイプ・マニュファクチャリング」と命名された。後にI.O.P.として知られることになる。

注1: ALRはAuto Labor Robotの略称。CはCommon、TはTestingを指す。
注2: TDはTesting Dollの略称。
注3: CSDはCommon Strengthen Dollの略称。

その2へ続く

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